@yuichirominato 2018.08.21更新 131views

D-Waveハードウェアから学ぶ量子アニーリングの量子トンネル効果の実現方法

D-Wave QFP QUBO イジング ハードウェア 磁束量子ビット 組合せ最適化 量子アニーリング

はじめに

以前の記事で、NASA&Googleが量子アニーリング型の量子コンピュータに関しての高速性検証の論文を出していました。それによると量子トンネル効果を活用した量子アニーリング型の最小基底探索における高速性がD-Waveマシンの特徴として捕らえられていました。

以前の記事:NASA&Googleの量子コンピュータは「一億倍速い」の論文(量子アニーリング)
http://blog.mdrft.com/post/235

では、実際にトンネル効果はどのように実現されているか、また横磁場や局所磁場などの縦磁場は実際どのように実装されているのかの概要を確認して見たいと思います。そのような知識を持った上でD-Waveマシンを活用してアプリケーションを考察することで高速性を実現できるチャンスが広がります。

参考

Natureに掲載されたこちらを参考にします。

Quantum annealing with manufactured spins
NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

M. W. Johnson1, M. H. S. Amin1, S. Gildert1, T. Lanting1, F. Hamze1, N. Dickson1, R. Harris1, A. J. Berkley1, J. Johansson2, P. Bunyk1,E. M. Chapple1, C. Enderud1, J. P. Hilton1, K. Karimi1, E. Ladizinsky1, N. Ladizinsky1, T. Oh1, I. Perminov1, C. Rich1, M. C. Thom1,E. Tolkacheva1, C. J. S. Truncik3, S. Uchaikin1, J. Wang1, B. Wilson1 & G. Rose1

1 D-Wave Systems Inc., 100-4401 Still Creek Drive, Burnaby, British Columbia V5C 6G9, Canada.
2 Department of Natural Sciences, University of Agder, Post Box 422, NO-4604 Kristiansand, Norway.
3 Department of Physics, Simon Fraser University, Burnaby, British Columbia V5A 1S6, Canada.

量子アニーリングに関する基本的事項はこちらを参考にお願いします。

「量子アニーリング、イジングモデルとフレームワーク」
http://blog.mdrft.com/post/6

仕組み

仕組みはとてもわかりやすく、上記論文の下図を参考にします。


引用:NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

これがD-Waveの基本の量子ビットです。この量子ビットが多数用意され、さらにそれぞれが相互作用と呼ばれる機構で繋がっていてD-Waveのマシンが構成されています。

仕組みはシンプルで、この量子ビットの主回路に流れる電流が左回りの場合には、量子ビットの中心を磁束が上むきに貫き、計算原理として+1を表現します。右回りに電流が流れる場合には磁束が下向きに貫き、計算原理として-1を表現します。基本的に電流が回ると磁界ができるという基本的な原理を使っています。

局所磁場について

上記の左上に$\Phi_1$という部分がありますが、これが量子アニーリングにおける局所磁場$h_i$を設定する部分で、誘導電流で磁界によって電流の向きを制御します。これにより、右向き・左向きの電流にバイアスがかかり、局所磁場の設定によって中心の磁束の上下の向きが影響を受けます。

D-waveの計算はDouble-Well型ポテンシャルと呼ばれるポテンシャル形状をもっており、左右のポテンシャルの低い部分をアップスピンとダウンスピンで区別をしています。中心の高くなった山の部分が2つの状態を隔てるエナジーバリアですが、この高さによってスピンが右や左にトラップされて移動が制限されてしまいます。また、局所磁場はこのエネルギーポテンシャルの底の高さを変更することになり、下図のように局所磁場の設定によってダウンスピンのポテンシャルの底が高くなると結果的にアップスピンに状態がトラップされやすくなります。


引用:NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

横磁場について

局所磁場は比較的わかりやすい仕組みで成り立っていますが、横磁場の実現方法は少し変則的です。

ときたい問題は$\sigma^z$の古典ハミルトニアンで表現されており、量子性は垣間見得ません。

引用:NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

量子アニーリングでは、初期を$\sigma^x$の量子状態からスタートし、最終的に上記の$\sigma^z$の古典スピンの状態へ落ち着きます。

引用:NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

その際に横磁場のハミルトニアンとときたい古典ハミルトニアンはスケジュールによって入れ替えられます。入れ替えるスケジュールの例は下記のようなグラフの通りです。

引用:NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

局所磁場の設定がスケジュールによって変わる場合、計算結果も変化するということが書いてあります。このように、量子アニーリングではスケジュールで量子性の強いハミルトニアンと量子性の弱いハミルトニアンを入れ替えることで計算を実現しています。

引用:NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

また、上記の図をみるとわかる通り、初期のポテンシャル形状は中央の山が小さく、左右の状態への遷移が容易となっています。そのため、量子による探索が容易です。それがだんだんと中央の山が大きくなり、ポテンシャルの形状が変化することで、状態の遷移が起こりにくくなり、探索が完了します。

ハードウェアではこのポテンシャル形状である、中央の山が低い状態から高い状態へと変化させることをもう1つのsquidを利用して実現します。これが横磁場に相当します。下図における$\Phi_2$という部分です。


引用:NATURE | VOL 473 | 12 MAY 2011

横磁場の実現

横磁場イジングを実現するということは、上記のsquidのエネルギーポテンシャルの中央の山の高さを下げて、二次曲線に近づけ、左右のポテンシャルの行き来をしやすくするということに相当します。それを実現するためには、上記の図の$\Phi_2$が重要になってきて、そもそものDouble-Well型ポテンシャルの実現方法から考察することで実現できます。

実はポテンシャル形状のDouble-Well型は、主要回路部分の二次曲線と、横磁場部分のコサインカーブとの組み合わせで実現されています。


中央のポテンシャルを下げるためには横磁場部分のコサインカーブの振幅を小さくして相対的に影響を小さくすればいいことになりますので、電流で振幅のサイズを調整することで、横磁場状態を実現することができます。

まとめ

局所磁場は直接電流の向きにバイアスをかけ、横磁場はJJを利用して間接的にポテンシャルの振幅を電流で操作することによって磁束量子ビットでのイジング計算を実現しています。アニーリングのスケジュールによって量子性の強さなどもイメージすることができます。D-Waveの技術力はとてもすごいものなので、これからの技術に敬意を払いながら量子計算機の発展を見守っていきたいと思います。

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