@yuichirominato 2018.04.22更新

トポロジカル量子コンピュータ概要

トポロジカル絶縁体 マヨラナフェルミオン 組紐理論

はじめに

量子コンピュータには多方式の計算方法があります。現在主流のものは超電導量子ビットと呼ばれるコンデンサに近い仕組みを使ったものです。そこで、マイクロソフト社は超電導量子ビットとは全く異なった方式の「トポロジカル量子コンピュータ」と呼ばれる方式を研究開発しています。トポロジカル量子コンピュータは仕組みがわかりづらく情報も少ないので、その辺りの基本をまとめて見たいと思います。

トポロジカル絶縁体

量子物質で電子の状態に幾何学的な性質を持つ特殊な絶縁体です。
下記のように0,1で穴が空いてるか空いてないかを判断する指標をトポロジカル不変量と呼びますが、真空のトポロジカル不変量とトポロジカル絶縁体のトポロジカル不変量が異なるため、どこかで辻褄を合わせる必要があります。その特殊な性質がトポロジカル絶縁体の表面に現れるため、その性質を使った量子計算が考えられています。

トポロジカル超伝導体

強いスピン軌道相互作用を持つInAsやInSbの1次元ナノワイヤーとBCS超伝導体を接合し、スピンレス1次元カイラルp波超伝導に相当する近接効果超電導を実現すると「マヨラナゼロモード」と呼ばれる質量ゼロのマヨラナ粒子がナノワイヤーの端に現れることが期待されています。このマヨラナ粒子を利用した量子計算を提案しているのがマイクロソフトのトポロジカル量子コンピュータです。

マヨラナ粒子

マヨラナ粒子は粒子が反粒子と同じという特殊な性質を持つ粒子です。マヨラナ粒子は非可換統計という、左右を交換すると状態が変化するという特殊な性質を持っています。この特殊性を後述の数学の組紐理論と対応させて量子計算を再現しようとしています。

キタエフ模型とマヨラナゼロモード

特殊素材のナノワイヤーと超伝導体を近接させることでナノワイヤーの先端にマヨラナ粒子を発生させます。この際に理論模型として使用されるのがキタエフ模型です。キタエフ模型の中のフェルミオンの結合がトポロジカル相と呼ばれる状態になったとき、フェルミオンの結合が変化し、ナノワイヤーの先端にマヨラナ粒子がでると予想されています。このマヨラナ粒子をマヨラナゼロモードと呼んだりします。

参考図書

トポロジカル絶縁体入門 (KS物理専門書) 単行本(ソフトカバー) – 2014/7/10
安藤 陽一 (著)
こちらをお勧めします。

マヨラナ粒子と非可換統計と組紐理論

一旦マヨラナ粒子ができると、それは非可換統計(非アーベル統計)と呼ばれる性質を持っていますので、その非可換統計の性質を利用して、複数のマヨラナ粒子を一列に並べて位置交換を行い、最終的に測定を行うことで量子計算を行います。その位置交換は組紐理論と呼ばれる理論と非可換統計を組み合わせて量子ゲート操作に対応する行列演算を再現しています。

組紐理論を利用したゲート操作

“数学における組み紐(くみひも)またはブレイド (braid) とは、垂れ下がる何本かの紐を適当に編んでできる図形を抽象化した数学的対象である。組み紐全体の集合が群を成すこと、幾何的対象の絡みを表す様子として次元がもっとも低いものであることなどから多様な分野に姿を現す。”

引用元:wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%84%E3%81%BF%E7%B4%90_(%E6%95%B0%E5%AD%A6)

組紐語を使って量子ゲートを表現できますので、様々な量子ゲートを組紐理論と対応させて実現します。

組紐語について

組紐を表現します。下記のようにどちらが上になってねじるかによって表現を変えます。
左側のように左が上になる場合に$\sigma_i$とし、右側のように右が上になる場合に$\sigma_i^{-1}$とします。

下記のようなものは、$\sigma_1\sigma_2^{-1}$となります。

これを応用してマヨラナフェルミオンを動かした軌跡とユニタリ変換を対応させます。

具体的な組紐と量子ゲート操作の対応

引用・参考資料

Fibonacci anyon におけるトポロジカル量子計算
藤井淳一
(大阪教育大学 情報科学講座)
( 2015 年 4 月 9 日受付 )
http://ex.osaka-kyoiku.ac.jp/~fujii/2015/DL/file/Fibonacci.pdf

こちらを参考にいたしました。
量子ゲートで使用されるユニタリ行列は、4種類実現できればいいということで、
近似的に表現されるようです。

$\sigma_1^{-2}\sigma_2^{-4}\sigma_1^4\sigma_2^{-2}\sigma_1^2\sigma_2^2\sigma_1^{-2}\sigma_2^4\sigma_1^{-2}\sigma_2^4\sigma_1^2\sigma_2^{-4}\sigma_1^2\sigma_2^{-2}\sigma_1^2\sigma_2^{-2}\sigma_1^{-2}$

その他のゲートも同様に組紐語で表されるということで、実現できなさそうなゲートもあるようですが、これらの性質を使ってゲート操作を行うとのことです。マイクロソフトはフィボナッチエニオンではなく観測型のイジングエニオンを使っての演算も考えているようで、多少方式が異なることもあります。

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